シリーズ新福祉国家構想6
岡﨑祐司・福祉国家構想研究会編
2017年11月刊行
46版400ページ
税別2400円
介護保険の問題点を整理。地域包括ケアシステムの現在を見据え、それらの抜本改革から高齢期ケア保障を実現する展望を示しだす。
目次
序章 介護不安制度から「権利としてのケア保障」への転換(岡﨑祐司)
1 社会保障の危機、介護保険の危機
2 現金給付の欠陥と現物給付への転換の必要性
3 「権利としてのケア保障」に向けた二段階の改革
第Ⅰ部 高齢者のケアを保障しえない介護保険――歴史と現在
第1章 「介護保険一七年」の軌跡と現状(林泰則)
1 本章の課題
2 介護保険の創設経過と制度設計
3 施行後の経過――〈混乱・抑制〉から〈手直し・助走〉、そして〈一体改革〉へ
4 「介護保険十七年」の帰結
補論1 高齢者のケアと地域保健――「社会的入院」の解消と本人が望むケアの実現へ(末永睦子)
1 「社会的入院」が生まれた背景――利用者負担を中心に(老人医療費無料化から介護保険法まで)
2 介護保険施行後の療養病床と介護保険施設
3 急性期病院と地域連携の課題
4 地域保健を住民主体で再構築するために――沢内村の生命行政に学ぶ
第2章 新たな段階を迎えた介護保険制度改革(林泰則)
1 本章の課題
2 「二〇一七年改革」の全体像と問題点
3 「安上がり」で効率的な提供体制を担う介護人材政策
4 介護の「産業化」をめぐる動向
5 むすびにかえて
第3章 歪められる地域包括ケアシステム
1 「我が事・丸ごと」をどうみるか――これは「地域共生社会」ではない(岡﨑祐司)
2 新しい総合事業の問題点――下流に押し流されるニーズの行方(中村暁)
第4章 介護保険財政の仕組みと現状(横山壽一)
1 介護保険の構造的欠陥と介護保険財政
2 自治体単位での給付と負担の調整=自己抑制の財政メカニズム
3 介護保険料と自治体による給付と負担の調整の限界
4 破綻する介護保険財政――現状と問題
補論2 介護における保険原理主義の破綻――低所得、無貯蓄高齢者の急増(後藤道夫)
1 高齢者世帯の家計硬直と貯蓄取り崩しの増大――「家計調査」から
2 貧困高齢者数(最低生活費未満で暮らす世帯の高齢者)の大幅増
3 介護保険料滞納の高率
4 無貯蓄高齢者の急増
5 無貯蓄・低貯蓄高齢者の介護保険利用抑制
第Ⅱ部 権利としての高齢者ケア保障の確立へ
第5章 生活と自治と権利の地域ケアシステムをつくる(岡﨑祐司)
1 「地域ケア」をどのような視点から検討するか
2 生活者中心の「地域ケアシステム」
3 地域ケアシステムと公的責任
4 地域ケアシステムと住民自治
第6章 地域ケアシステムにおける医療・福祉・居住(岡﨑祐司)
1 地域ケアシステムと医療
2 地域ケアシステムにおける歯科・口腔ケアの強化
3 地域ケアシステムにおける社会福祉
4 地域ケアシステムにおける住まい問題
5 生活・地域・時間におけるケアの統合
第7章 ケアのナショナルミニマムの確立へ(末永睦子)
1 ケアの社会化実現のためにナショナルミニマムの議論を
2 アセスメントとケアプランの例――比較的重度の障害をもつ人の事例から
3 「軽度者」を排除する「自立支援」の問題について
4 認知症のアセスメントと施設ケア
5 ケアの普遍化と介護保険
6 ケアマネジャーの創設と専門職性の変化
7 ソーシャルワーク機能を公的責任で再構築するために
第8章 高齢者ケアの財政論――介護保障のために(横山壽一)
1 高齢者ケアと介護保険による制約
2 前提とすべき高齢者ケアの財政原則の確認
3 介護保険財政の改革――介護保険から介護保障へ
4 生活ケアとしての統合性と他制度の改革
5 高齢者ケアの財政確保
第9章 介護保障につなぐ制度改革(林泰則)
1 本章の課題
2 現行介護保険制度の現状と、政府による制度改革の基本方向
3 「名ばかり」社会保険から「真っ当な」社会保険へ――現行制度の「再設計」の課題
4 「再設計」に連動する当面の政策課題
5 現行介護保険の「再設計」から、新たな高齢者介護保障制度の「構築」へ
おわりに 福祉国家ビジョンと介護保障(後藤道夫)
執筆者
編者・岡﨑 祐司(おかざき ゆうじ) 1960年生まれ 佛教大学教授
林 泰則(はやし やすのり) 1965年生まれ 全日本民医連事務局次長
末永 睦子(すえなが むつこ) 1965年生まれ 明星大学非常勤講師・社会福祉士
中村 暁(なかむら さとし) 1972年生まれ 京都府保険医協会事務局次長
横山 壽一(よこやま としかず) 1951年生まれ 佛教大学教授
後藤 道夫(ごとう みちお) 1947年生まれ 都留文科大学名誉教授
※肩書は刊行当時のものです。
書評情報
『全国商工新聞』2018年2月19日
『高齢者住宅新聞』2018年2月14日